霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
チンパンジーの作業記憶に関する縦断的研究
村松 明穂
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p. 46

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抄録

チンパンジーの作業記憶について,先行研究では,コドモチンパンジーは,オトナチンパンジーやヒトの成人に較べて優れた能力を持つことが示されている。 これらの研究によって,チンパンジーとヒトの作業記憶における保持能力や方策について,共通点と異なる点も明らかになってきた。さらに,研究結果は,チンパンジーの作業記憶能力が,その生涯を通じて変化する可能性を示唆している。しかしながら,チンパンジー1個体の作業記憶能力について縦断的に調べた研究はない。また,ヒトを対象とした研究においても,発達と加齢が作業記憶に与える影響についての報告や研究が数多く存在する一方,ほとんどの研究は,若齢群と高齢群の横断的比較によるものである。

本研究の目的は,縦断的研究によってチンパンジーの一生涯における作業記憶能力の変化の過程を明らかにすることである。京都大学霊長類研究所で飼育されているチンパンジーたちは,10年以上に渡って記憶に関する実験的研究に参加してきた。今回の分析では,チンパンジー6個体のおよそ10年分の作業記憶課題のデータを対象として,1)コドモ・ワカモノ個体がオトナ個体となる期間,2)オトナ個体が老齢個体となる期間それぞれにおける,各個体の作業記憶能力の変化を追った。この分析の進捗状況について報告する。

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