霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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シンポジウム
味覚と人類の肉食
早川 卓志
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p. 13-

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抄録

初期人類は狩猟や調理技術を発展させ、高品質な肉を得るようになった。しかしそもそも「肉が美味しい」と感じられなければ個体の肉食行動は誘起されない。類人猿は果実食を中心とした生活を送り、タンパク質が比較的豊富な若葉を食べる。初期霊長類となるとタンパク源の中心は昆虫であった。霊長類のゲノムに刻まれている味覚受容体遺伝子の分子進化と機能を調べてみた。すると、この昆虫食から葉食への転換の過程で、①苦味受容体がより広く多様な毒物を受容するようになり、②旨味受容体は単体での遊離ヌクレオチド受容能を失って遊離グルタミン酸受容に特化するようになったことがわかった。①は、毒性のある葉の摂取を避けるよう進化した結果と説明できる。②は、植物体には遊離ヌクレオチドがほとんど含まれていないためと説明できる。つまり人類は、昆虫食から葉食へ転換するときに獲得された味覚のまま、新たな肉食適応へと臨んでいる。肉に感じる「美味しさ」は、食肉目動物と違って肉食に適応進化した結果の味覚ではない可能性を検討すべきだ。

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