主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 38
開催地: 京都府
開催日: 2022/09/16 - 2022/09/19
p. 39-
ミネラルは、生体内で様々な機能を果たす、生存に必須の微量栄養素である。本研究では、屋久島低地の野生ニホンザルの食物を、長年飼育ニホンザルで使用されてきた「理想的な」食物(固形飼料)、および飼育霊長類の食物の栄養学的基準(米国、National Research Council (NRC)基準)等と比較した。また、飼育ニホンザルが固形飼料を採食した場合のミネラル収支を明らかにするとともに、実験的にナトリウムを給餌した場合の生理的反応を調べることで、ミネラルの摂取量が十分量であるかについて考察した。これらの結果をもとにして、野生の霊長類のミネラル獲得戦略について、その基盤となる基礎資料を提供することが、本研究の目的である。海岸から800 m以内である屋久島低地では、動物質、キノコ、成熟葉のナトリウム含有量が高かった。成熟葉と動物質のカルシウム含有量もNRC基準を上回った。マグネシウムとカリウムについては、ほとんどすべての食物で、NRC基準を上回った。リンでは、すべての食物で、固形飼料やNRC基準を大きく下回っていた。ナトリウム給餌実験では、コントロール条件でも、塩化ナトリウム水溶液を自由に飲ませた条件のどちらでも、ナトリウム再吸収ホルモンであるアルドステロンの糞中の濃度は変わらなかった。固形飼料のナトリウム含有量は、NRC基準よりもやや低かったが、ナトリウム給餌実験の結果は、固形飼料のナトリウム含有量は、腎臓でのナトリウムの再吸収を必要としないくらいに、十分必要量を満たしていることを示唆する。ミネラルの収支パターンは、ナトリウムでは排出はほとんど尿により、見かけの消化率は非常に高い。カルシウム、マグネシウム、リンではこれと反対に、ほとんどの排出は糞により、見かけの消化率は低かった。カリウムでは中間的な傾向を示した。