霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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口頭発表
野生ボノボにおける、メスからの激しい攻撃によるαオスの順位転落
徳山 奈帆子坂巻 哲也
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p. 37

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抄録

集団性霊長類の多くには社会的順位が存在し、高順位個体は低順位個体よりも集団生活の利益をより多く享受することができる。個体の順位決定は長期間にわたる攻撃交渉の結果であることもあれば、一度の激しい闘争により大きな順位の変動が起こることもある。ボノボのオス同士の直接的な順位争いはチンパンジーに比べると穏やかであり、オスが高い順位を獲得するためには母親のサポートが重要であることが知られている。本発表では、メスたちの激しい攻撃によりαオスが一時的に「群れ落ち」し、急激なオス間順位変動が起こった事例を報告する。2012年から2015年3月まで、PE集団の最高齢メスBkの息子であるSNがαオスであった。2015年3月5日、発情したメスの近くでSNが攻撃的ディスプレイを行ったことをきっかけに、Bkを含む4頭のメスがSNを激しく攻撃した。SNはメスたちに噛みつかれて激しい悲鳴を上げて逃げ去り、その後19日間姿を見せなかった。集団に戻ったSNは、それまで第二位、第三位だったオスに対してグリメイスなどの劣位的行動を取るようになり、交尾頻度が大きく低下した。その後SNはαオスとして「復権」することはなく、2019年3月、母親と共に姿を消した。本事例からは、ボノボのオスにとっては母親だけでなく集団内のメスたちとの関係性も順位の獲得と維持に重要であることが示唆される。

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