霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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口頭発表
タイ王国に生息するベニガオザルで観察された死体に対する反応の事例報告
豊田 有ゴンカルヴェス アンドレ丸橋 珠樹Malaivijitnond Suchinda松田 一希
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p. 42

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抄録

動物にとって、個体の「死」は避けることができない現象である。霊長類における死生学(thanatology)は、個体が仲間の死に直面した時に、どう振る舞い、どのような影響を受け、それとどう向き合うのかを調べる学問であり、近年注目されている研究領域のひとつである。発表者が2015年から観察を実施しているタイ王国の野生ベニガオザルの調査地では、サルの死体が発見された際には、可能な限り死体に対する他個体の反応を記録し、データの蓄積をおこなってきた。これまでは死児運搬や死体への毛づくろい行動が主な記録事例であったが、2023年の観察期間中には、死体との交尾行動が観察された。類人猿における観察でも記録がない「死体との交尾行動」が記録されたことを踏まえ、本発表ではその詳細を報告するとともに、過去の観察事例もまとめながら、ベニガオザルにおける死生観を考察する。

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© 2023 日本霊長類学会
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