霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
屋久島のニホンザルにおける日中の休息場所選択と気象条件との関連
田伏 良幸
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p. 46

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抄録

体温調節行動は多くの霊長類種でみられ、日中の休息場所の選択は気温に応じて変化することが知られている。たとえば、気温が低いときには日向で日光浴をし、暑いときには洞穴で涼む割合が高いことがわかっている。このように霊長類は、個体レベルで見ると気温に応じて自身の体温が快適になるように休息場所を選択する。一方で、個体の体温調節には気温だけでなく湿度も影響しているはずであるが、これまで湿度も含めて休息場所の選択に影響する要因を調べた研究はほとんどない。そこで、本研究は2020年9月から2021年10月にかけて屋久島西部海岸域に生息するニホンザル群の4歳以上のメス24頭を対象に、気温・湿度に応じた休息場所の選択を調べるため、携帯型気象計を用いて計測した気温・湿度と対象個体の休息場所の日照条件について多項ロジスティック回帰を用いて分析した。その結果、まず湿度に関わらず、気温が高くなると日向の利用割合が減少し、日陰の利用割合が高くなることがわかった。一方で、湿度の影響については、気温が約23℃未満のときは、湿度が高いほど日向で休息する割合が高くなる傾向があったが、それ以上の気温になると湿度が高いほど日陰を利用する割合が高くなっていた。このことは屋久島のニホンザルの休息場所選択には気温と湿度が相互作用しながら影響を及ぼしていることを示している。これはニホンザルでもヒトと同様に気温だけでなく湿度が体温調節機能に影響していることを示唆している。

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