主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 39
開催地: 兵庫県
開催日: 2023/07/07 - 2023/07/09
p. 48
ヒトを含む霊長類にとって他者の視線方向は重要な社会的情報源である。他者の視線方向に対する感受性は社会機能を反映するかもしれない。しかし、成体マカクサルのヒト視線方向に対する反応を、社会機能評価として用いた研究は少ない。本研究ではカニクイサル、アカゲザルのヒト視線方向に対する反応行動を検証すると同時に、脳内神経伝達物質およびミエリン鞘の構成成分に注目しその動態にかかわる遺伝子多型を調査した。観察された行動項目(移所運動、リップスマック、前方滞在、注視)のうち、コミュニケーション行動(リップスマック、注視)のみが視線方向に影響されていた。また視線方向に対する感受性には個体差があり、クラスター分析によって、低感受性、高感受性(消極的)、高感受性(積極的)の3群に分類されることがわかった。このようなマカクサルのヒト視線方向に対する感受性分類は、社会性の機能評価系として有用である。現在、神経伝達物質およびミエリン鞘の構成成分遺伝子多型調査から、脳機能多様性との関連解析をすすめている。