霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
学術論文からみるチンパンジー研究の歴史
樺澤 麻美
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p. 51-52

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抄録

チンパンジーは霊長類の中で、飼育下と野生の両方において最も研究されている種の一つである。本研究では、学術論文データベースWeb of Scienceで検索可能なチンパンジーに関する学術論文5744件(1900年から2022年)を抽出し、計量書誌学分析ソフトBibliometrixを用い、研究分野の展開と歴史的推移、チンパンジー研究及びその他の学術領域に影響を与えた文献、主な研究者達とその所属機関等を分析した。その結果、チンパンジー研究の論文発表数は1930年代から増加し始め、1960年代から急増し2014年に最多数で、その領域も動物学、生物医学、遺伝学、心理学と多岐にわたってきていることが判明した。学術誌としては、American Journal of Primatology、Primates、Journal of Comparative Psychologyの順で発表された論文数が多い。著者別の論文数はW.D. Hopkins、C. Boesch、 M. Tomonagaの順だが, 全著者の所属機関から論文数を見ると、日本の京都大学、米国のエモリ―大学、ドイツのマックス・プランク研究所の順であった。また、チンパンジー研究論文5744件によって最も被引用数の多い論文はWhitten(1999)によるチンパンジーの文化に関するものであるが、分野に関わらず被引用数が多かった論文はTamura(1993)によるヒトとチンパンジーの間の塩基置換に関する論文であった。チンパンジーの科学への貢献を確認する一方で、野生チンパンジーの絶滅危惧の回避及び飼育下の個体の福祉の向上等に向けて、これまでの研究成果の適用あるいは新たな研究の展開が必要であると考える。

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