霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
会議情報

口頭発表
チンパンジー調査地で研究者はヒョウとどのくらい出会うのか
中村 美知夫仲澤 伸子保坂 和彦伊藤 詞子川添 達朗松本 卓也西江 仁徳清家 多慧島田 将喜座馬 耕一郎
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 45

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抄録
捕食者の存在は、霊長類の社会や生態を考える上で無視できない。体が大きいヒト科霊長類も例外ではなく、ヒョウが生息している類人猿調査地では捕食事例も報告されている。一方、どの調査地にどの程度ヒョウが生息しているのかという情報は限られている。カメラトラップによる密度推定は有効だが、費用やメンテナンスの労力がかかることから、長期間のモニタリングは必ずしも容易ではない。 本研究の目的は、チンパンジーの長期観察が行われているタンザニア、マハレ山塊国立公園において、研究者(調査助手を含む)が実際にヒョウを目撃した記録を概観することである。目撃したことをただ記録しておくという低コストでローテクの手法で何をどこまで言えるのかを検討する。 2014年10月~2023年11月の間の55カ月分のヒョウの情報をまとめた。ヒョウの目撃があったのはそのうち20カ月(全体の36.3%)、30回であった(0.55回/月)。目撃回数には年や月による違いはあるが、概ね滞在している研究者の人数で説明できそうである。研究者がキャンプにいる際の目撃が最多(21/30=70.0%)で、霊長類調査中の目撃は、チンパンジー観察中が2回、アカオザル観察中が3回であった。時間帯の記録があるもので、昼9回、夜9回、薄明薄暮(6~8時、18~20時)9回であった。 ヒョウによる捕食圧が高いと言われるコートジボワールのタイ国立公園では、ヒョウの目撃は年に1~2回と書かれている。この数値を信頼するならば、マハレでの目撃頻度のほうがかなり高そうである。もちろん、今回の目撃頻度をヒョウの生息密度に読み換えることはできない。ヒョウの人馴れ、キャンプの位置、人間側の活動や注意力など、さまざまな要因が目撃に影響を与えうるからである。ただ、こうした稀な事例を蓄積することも、ある程度までは、霊長類捕食者の実態を理解する一助になるであろう。
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