抄録
マカクやヒヒのメス間の毛づくろいは、血縁、年齢、順位が近い個体間で多いことがよく知られている。しかし、毛づくろい関係が誰とどれくらい長く続くのかなどの長期縦断的な視点からの分析はSilk et al. (2006)のサバンナヒヒのみであり、長期間に何頭ぐらいの個体と毛づくろい関係をもつかなどは全く情報がない。そこで、2003年から2015年までの13年間(4―10月)、勝山ニホンザル餌付け集団(岡山県真庭市)で記録したオトナ間の29,000バウト以上の毛づくろいを基に、観察期間中に10年以上在籍していた20頭のメスの毛づくろい関係を分析した。これらのメスは観察期間中に平均56頭のメスの毛づくろい相手を持ち、そのうち10年以上毛づくろいが継続した相手は3頭のみで、3年から9年継続したメスが15頭、残りの38頭が単年または2年連続、あるいは単年を複数年記録されたメスであった。これら20頭のメスが持った3年以上継続した毛づくろいペアでは、どちらか一方がオトナになった年に始まったのが約60%、残りの40%は双方がオトナになって1年以上経過して始まっていた。3年以上継続した毛づくろい関係の終了は、一方が集団から離脱した場合が約30%、両個体が集団に在籍しているのに毛づくろい関係が消失したのが約40%、残りが観察終了時も継続していた。母娘ペアの97%では集団に在籍する限り毛づくろいが続いた。他方、3年連続で毛づくろいがあった祖母・孫ペアの割合はあり得るペアの約70%、おば・姪ペアでは約50%、従妹ペアは約30%、非血縁メス間では約10%であったが、継続年数が長くなるほどこの値が低下した。3年以上継続したペアでの毛づくろいの平等性の度合いは、継続年数及びペアの年齢差に関係なくほぼ一定であったが、非血縁ペアよりも血縁ペアで、血縁ペアでは血縁度が高いほど毛づくろいの平等性の度合いが高かった。