霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
会議情報

ポスター発表
「高宕山のサル観察クラブ」発足:(Ⅱ)ニホンザル高宕山個体群の遺伝的特徴調査と「高宕山のサル観察クラブ」による遺伝子調査
川本 芳丸橋 珠樹相沢 敬吾池田 文隆白井 啓白鳥 大祐直井 洋司
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 90

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抄録
千葉県房総半島のニホンザルは他の地域から孤立した個体群で、地理的に隔離されている。この地域では外来マカクとの種間交雑が進み、国や千葉県による対策が講じられるようになって久しいが、野生個体群への交雑の影響は現在も続いている。富津市は台風被害で倒壊した高宕山自然動物園の飼育展示施設から逸走したサルを回収し、新施設を作って交雑個体を除いた個体群の展示を2022年4月から再開した。これまで房総半島個体群の研究では、形態で小型化を示すこと、タンパク質多型で遺伝子多様性が他所に比べて低いことが報告されてきた。一方、外来種問題への対策を考える日本霊長類学会などでは、高宕山自然動物園を域外保全の助けになる繁殖施設として意識するようになっている。しかし、閉鎖環境での飼育や繁殖には、繁殖統御(栄養等の管理)、微生物統御(疾病等への対策)、遺伝統御(近親交配の影響評価等)の課題がある。富津市高宕山自然動物園在り方検討会議(2023年に解散)が提出した提言書を元に、園内個体群の今後の管理運営に役立つ情報を収集することを目的に、「高宕山のサル観察クラブ」を立ち上げた。これまで高宕山自然動物園では、個体群管理の基礎になる個体識別ができていなかった。現在の調査で優先する課題は、個体識別を速やかに完成し、個体情報や血縁関係を理解して今後の管理運営に役立つ情報を集める体系を作ることである。この調査では、観察だけでなく遺伝子の利用も計画している。遺伝的変異を利用した調査を可能にするため、富津市の協力で得た血液試料を利用し、マイクロサテライトDNAが示す遺伝的多型を検索して、飼育個体の識別と血縁構造の解析を進めている。今回の発表では、(1)識別に利用できる標識の選別、(2)他地域と比較した房総個体群の遺伝的特徴、(3)遺伝的に見た高宕山自然動物園個体群の特徴と構造、について報告する。
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