抄録
厚生労働省(健康づくりのための睡眠ガイド2023)は,中高生に8〜10時間の睡眠を推奨しているが,半数以上が8時間以上を満たしていない(理化学研究所子ども睡眠健診プロジェクト)。勉強や部活動で多忙な宇土中・高では,学校で眠くなる経験があったと回答した生徒が86.1%であった2014年調査から,昼食後,10分間の午睡(ウトウトタイム)を設け,眠気の解消や集中力の向上を図っているが,その時間延長を求める声が多い。本研究では,午睡の最適時間の設定と午睡延長による夜間の睡眠への影響を検証することを目的とする。被験者は高校2年4人,夜間入眠時刻が規則的なA(女),B(女)と不規則なC(男),D(女)とする。Deep Sleep Headband(Philips 社)で睡眠時の脳波を測定し,睡眠段階の推移を記録する。入眠,覚醒,レム睡眠,浅い睡眠,深い睡眠,総睡眠時間の6項目は,それぞれ対応のある2群の差の検定であるウィルコクソンの符号付き順位検定を行う。午睡の最適時間の設定のため,平日(学校)と休日(自宅)で午睡開始から自然覚醒までの睡眠を計測した結果,被験者Aでは平日(n=10),休日(n=10)ともに約30分であったが,浅い睡眠が平日6.82分,休日18.58分と有意に差(w =2.09,p=.038)を,覚醒が平日10.73分,休日4.16分と有意に差(w =2.29,p=.022)を得た。被験者Bも同様に浅い睡眠が平日12.06分,休日18.85分と有意に差(w =2.10,p=.036)が得られた。いずれも深い睡眠に入る前に自然覚醒した。午睡開始から自然覚醒までの30分の午睡が夜間の睡眠に及ぼす影響の検証のため,午睡あり,午睡なしを週単位で入れ替えるクロスオーバー試験をした結果,すべての被験者で睡眠6項目において有意に差は得られなかった。本研究の結果,ウトウトタイムは,入眠時間,覚醒時間に留意したうえで,深い睡眠に入る前の浅い睡眠を確保する午睡がとれるよう時間,環境の設定をすること,深い睡眠に入らない午睡は夜間の睡眠に影響を及ぼさないことが示された。