霊長類研究 Supplement
第41回日本霊長類学会大会
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口頭発表
霊長類背側肩帯筋の比較解剖学:形態学的特徴と系統発生
姉帯 沙織時田 幸之輔姉帯 飛高小島 龍平鳥海 拓平崎 鋭矢遠藤 秀紀
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 52

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抄録
霊長類の多様な運動様式においては前肢への体重負荷が変化する。前肢の体重支持を担う筋群は, 種ごとの運動の特徴を反映する可能性がある。そこで, 肩甲骨と体軸骨格をつなぐ筋群である前鋸筋(SA), 肩甲挙筋(LS), 菱形筋(Rh)より構成される背側肩帯筋(DSG)に注目した。本研究では, DSGの形態学的特徴を比較し, その形態形成と形態決定要因を明らかにすることを目的とした。狭鼻猿4種16側(ヒト, チンパンジー, カニクイザル, フランソワルトン), 広鼻猿4種10側(クモザル, リスザル, アカテタマリン, フサオマキザル), 曲鼻猿3種6側(エリマキキツネザル, ワオキツネザル, ポト)のDSGの形態と支配神経を調査した。DSGは, LSの起始範囲に基づき3型に分類された:LSが第1–7頸椎横突起から起始し, 第1肋骨から起始するSAと連続する連続型;LSが第1–4頸椎横突起から起始し, LSとSAが分離する分離型;連続型と分離型の中間型。分離型にはヒトとチンパンジー, 中間型にはリスザルとアカテタマリンが含まれ, それ以外は連続型に分類された。DSGの支配神経はC4–7の分枝であり, C5の支配領域に分類間の違いがみられた。C5由来の神経は, 連続型と中間型ではLS下部に, 分離型ではLS下部とSA上部に分布していた。連続型の種が最も多いことから, 霊長類DSGの祖先形は連続型と推測される。支配神経の分布様式から, 連続型においてC5支配領域であったLS下部がSA上部に移行することで分離型DSGが成立したと考えられる。分離型は類人猿のみであることから, 類人猿におけるSA上部の機能的重要性が示唆される。類人猿の前肢形態に影響する運動にブラキエーションが挙げられるが, 類似した運動や骨格形態を持つクモザルは連続型であった。よって, DSGの形態決定には系統による制約が示唆される。本研究は, EHUB共同利用研究にて実施された。
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