霊長類研究 Supplement
第41回日本霊長類学会大会
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口頭発表
ナトリウムの利用可能性と野生および飼育ニホンザルとニホンジカの糞中アルドステロン濃度
半谷 吾郎揚妻 直樹揚妻-柳原 芳美大井 徹近藤 崇田伏 良幸鈴村 崇文Tianmeng HE本田 剛章太田 民久木下 こづえ
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 84

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抄録
陸上植物食動物にとって、主食である植物には十分な量のナトリウムが含まれていないため、その獲得は重要である。陸上植物食動物でのナトリウム欠乏に対する生理的反応を明らかにするために、様々なナトリウムの利用可能条件下で生活するニホンザルとニホンジカの糞中アルドステロン濃度を調べた。アルドステロンはミネラルコルチコイドホルモンの一種で、腎臓でのナトリウムの再吸収を促進する。ニホンザルの糞中アルドステロン濃度は、飼育下および海水を習慣的に摂取する幸島の野生個体群では低かった。飼育下のニホンザルの餌はもっぱら必要栄養成分があらかじめ含まれる固形飼料であり、ナトリウムは十分に確保されていた。他の野生個体群(屋久島低地、屋久島高地、白山)では、たとえ海岸近くに住んでいる個体群であっても、糞便中のアルドステロン濃度が高かったことから、彼らはナトリウム獲得戦略として腎臓でのナトリウム再吸収に依存しているようである。ニホンジカでは、糞中アルドステロン濃度は野生個体よりも飼育個体の方が低かった。飼育個体に給与されるシカ用固形飼料はナトリウムを豊富に含むが、野生のシカにはそのような餌はない。本研究は、ナトリウムの摂取が容易に起こりうる稀な状況を除き、アルドステロン濃度が高いことを示した。このことは、腎臓におけるナトリウムの再吸収が陸生植物食動物の間で一般的な戦略であることを示唆している。
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