抄録
近年,タッチパネル製品が増える一方で高齢者や視覚障がい者など健常者と同様にタッチパネルを操作できない人々もいる.現在では公共性の高い製品にもタッチパネルが搭載され,この不平等を軽減するシステムが必要とされる.そこで,以前からタッチパネルに触覚を与え,タッチパネル操作支援を行う研究が盛んである.
我々はタッチパネルの持つ汎用性と柔軟性を損なわず,クリック感やボタンの位置を呈示できるタッチパネルの実現を目指している.このような福祉システムを普及させるには簡単な構造で,実装置への依存性が少ない,各種アプリケーションで共有の開発環境を提供する必要がある.我々は構造が簡単なハードウェアフレームワークと汎用的なソフトウェアフレームワークを提案した.ただし,ソフトウェアフレームワークは概念レベルの提案である.実装置に依存しない実装を行うためにはユーザインタフェースやアプリケーションの切り替えなど,より実用に即した側面の検討が必要だった.
本研究で,我々はハードウェアやOSとの依存が無い汎用的なGUI (Graphical user interface) ツールであるGTK (The GIMP toolkit) をユーザインタフェースに採用する.そして,タッチパネルは実装置との隠蔽を行うため,linuxを動かす.我々はGTKライブラリと組みわせたタッチパネルライブラリを開発する.タッチパネルライブラリは実装置の詳細を隠蔽する低レベルな関数群である.それらのライブラリを使って,ソフトウェアフレームワークをアプリケーションに実装する.本論文では,ハードウェアフレームワークとソフトウェアフレームワークを概説し,ソフトウェアフレームワークに沿ったアプリケーションの実装法を説明する.そして,各種アプリケーションとは分離されたタッチパネルが動かす制御部を示す.最後にGTKによる実装法によって実際にATMを題材としたアプリケーションを開発し,実応用への適用性とその動作を検証した.