抄録
電車のドアには挟まり防止用のシステムが必要である。しかし,従来のシステムはドアの先端部にある緩衝ゴムなどの影響により15[mm]程度の異物を検出できない領域がある。これによって,手のひらやバッグのタグ程度の厚さでは検知することは困難である。そこで本研究では,光センサを用いた異物検出による挾まり防止システムを提案する。これは電車のドアの上部に光源,下部に受光部,開口部の側面に反射板を設置し,上部から下部にかけて光を反射させながら通信を行う。そして,異物によって通信が遮断されると,受光部が異物を検知する。また,ドアは閉まっている状態で検出を行うため,反射角の変化が無く,一定の検出ができる。この方式では,光源に指向性の低い赤外線LEDを用いることによって,初期段階での設置を簡易化することが可能となる。また,光路の調整を行うことによって,車両形状が曲面上の電車のドアにも対応できる。
実験は光源部と受光部の設計,開発を行い,動作検証を行った。なお,電車のドア模型には車両形状が直線状を用いた。また,光源部は外乱光と区別するため,送信信号に38[kHz]の搬送波を合成した。さらに,閾値は4.81[V]に設計した。そして,異物には手のひら,衣服,封筒を用いて,反射板間の間隔を4[cm]と2[cm]で行った。その結果,手のひら,衣服,封筒において4[cm],2[cm]ともに正常に機能した。したがって本研究より,車両形状が直線状の電車のドアに対して,提案したシステムは実現可能であるといえる。