抄録
PFI事業では、VFMの向上を図るために、ライフサイクルコストの縮減とともに、サービス水準の向上が重要であり、民間事業者の選定に当たっては、定性的な要素も含めたサービス水準を的確に評価したうえで事業者選定を行う必要がある。ところが、民間事業者選定段階においては評価基準が価格に偏重し、景観や環境、文化・風土などの定性的要素への配慮に欠ける提案が採用されているとの指摘や、品質や創意工夫がないがしろにされるとの指摘がなされている。
これに対し、総合評価における価格以外の要素への配慮や、審査の透明性確保の必要性に関する提案がなされている。しかし、価格以外の要素、特に景観や文化といった定量化が困難な要素も含めた適切な評価手法が確立しているわけではない。
そこで本論文では、PFI事業の民間事業者選定時における定性的要素を含む適切な評価手法を確立することを目的として、(1) 現状の総合評価に関する背景と課題、(2) 数値化が困難な定性的要素を適切に評価するための審査方法、という視点から検討を行い、民間事業者選定時における定性的評価を含めた評価手法のあり方について提案を行う。