抄録
本論文は、英国グラスゴーにおける都市貧困地域再生への取り組みの事例として、地域の若者を対象とした社会的包摂 (social inclusion) プログラムの形成と発展の過程を明らかにする。90年代後半以降の英国の都市再生政策は、80年代の民間活力の導入による不動産開発と経済主導のアプローチが都市貧困問題を助長した反省を受けて、より社会的な側面に重点が置かれてきた。都市における多層的な貧困は、社会的排除 (social exclusion) の問題として理解され、官民だけでなくヴォランティア・セクターを含めたパートナーシップにより社会的包摂を目指すことが都市再生の目標となった。本研究は、貧困地域の若者に対してサッカー教室を提供するヴォランティア組織として始まったプロジェクトが、多面的なサービスを行う社会的包摂プログラムへと成長する過程を記述し、その持続的発展を可能としたプロジェクト・マネジメントの成功要因を抽出する。