抄録
本研究では, 岩手県において収集された路面性状調査データをもとに, 舗装維持管理システムを作成し, 道路網の長期的な舗装サービス水準と, その確保に必要となる年間補修費用の関係を調べた. 道路の維持管理予算の縮減に伴い, 維持が不可能になる路線がどの程度生じるかについて, 地理情報システム上に表現するとともに, 維持停止路線延長として明示的に評価する手順の開発を試みたものである. 舗装サービス水準ならびにその経年劣化をMCI (維持管理指数) で表し, 所与の年間補修予算の下で, 劣化状態に応じた補修工法ならびに補修対象とする道路リンクを選定し, 道路舗装補修のシミュレーションを実施した. 年間補修予算が一定額を下回ることで, 道路網全体の舗装サービス水準の維持が困難になること, それにより道路網の部分的な舗装サービス水準の確保を断念し, 残りの道路網について舗装サービス水準を保持する必要の生じることを示した. 将来に渡り確保すべき舗装サービス水準の決定や, 必要となる維持管理投資予算等に関わる地域道路網の維持管理計画の立案に資することを目的としたものである.