抄録
本研究では、フィリピン国の大規模事業に適用される環境アセスメント (EIA) 制度を対象に、そこで実施される参加手続の適正性が、紛争状況での住民の事業に対する態度に与える影響を考察した。分析事例として明確な紛争状況にあるサンロケ多目的事業を対象とし、周辺住民への調査によって得たデータをもとに、共分散構造分析を用いて仮説因果モデルの検証をおこなった。その結果、(1) 不適正な手続の実施が住民の態度に負の影響を与えたこと、(2) 不適正な手続参加のため、メディアが住民の態度に大きく影響を与えたこと、(3) 事業の公益性は態度決定の根本的な要素であること、以上3つの知見が得られた。