抄録
近年日本において, 流域環境への影響が危惧される水資源開発を行う際には, 関連するステイクホルダー問の合意形成の基での意思決定が重要課題となってきている. しかし, 地域性や住民意識などが十分に考慮されないまま開発計画が立てられることも少なくない.水資源開発の意思決定においては, 結果よりも結果にいたるプロセスが重要であるとの認識に立ち, 本研究では, その意思決定を行う為のシステム論的なプロセスの提案を行うと共に, その吉野川可動堰問題への適用を行う. そこではまず, ステイクホルダーとして開発推進派と環境保護派を設定し, それらの効用関数を構築する. そして凸依存性を考慮したグループ効用関数を用いて, 開発推進派が環境保護派に対して歩み寄りを進めたときの意思決定について述べる.