2022 年 31 巻 p. 172-183
熊本地震および豪雨による崩壊等の復旧緑化事業に取り組みつつ,ススキ等野草地(半自然草原として維持されている牧野)の構成種を主な対象として地域性種苗の活用,流通拡大を目指している.生態系に配慮した復旧事業の推進,地域性植物の活用には地域の生産力,社会全体における価値観の共有化も欠かせない.本プロジェクトに多様な主体と取り組み,生物や生態系の多様性の保持,伝統的な視点を大切にした持続的な地域管理,地産資材の活用による地域の活性化などを進めている.2020,2021年には阿蘇市波野地区で花暦の作成等による普及,草原の短草型化の試験,牧野における有望な緑化植物であるススキ,ヤマハギ,コマツナギ種子の採取などの現地活動を地域の方と協力して実施した.採取した種子の阿蘇地域における復旧事業への活用を推奨し,現地およびコンテナ実験による導入試験を実施した.また,地域性種苗の使用・流通の拡大に寄与すると考えられる情報を整理して発信した.