2022 年 31 巻 p. 184-192
本プロジェクトでは,1)森林と野生動物の保護,2)地元住民を対象とした環境教育,3)エコツーリズムによる地元経済への貢献を3つの柱とした活動を推進することを目的とした.1)では,主として霊長類を対象とする生息状況のモニタリング調査と巡視員による伐採や密猟などの監視を行った.2)については,新型コロナの影響でながらく中断していたが,2022年2月から再開した.3)については,上記のモニタリング調査によって,National Forestry Authority(NFA)と United States Agency for International Development(USAID)が協力して進めようとしているツーリストロッジとキャノピーウォークの建設候補地を,ツーリストによる安定的な霊長類の観察可能性と霊長類の生息に及ぼす影響という面から検証することを目指した.モニタリング調査の結果,チンパンジー以外の霊長類はカリンズ森林全域にほぼ均等に分布していたが,チンパンジーは,現在NFAが観察ツアーを行っている地域の密度が高く,NFAとUSAIDが施設建設の第一候補地としている地域ではほとんど見られないことがわかった.また,森林内で調査員が人と出会う頻度の高い地域では,霊長類の遭遇頻度が低くなっていることも確かめられた.