本論文は、イスラエルがパレスチナの地に「建国」をして以降の食権力の発動について論じる。食権力とは、食を通じて人間および自然を管理する諸力のことである。イスラエルは、パレスチナの人びとから武力を用いて土地と水を奪い、経済封鎖をして飢餓を蔓延させ、耕作可能地を緩衝地帯にしてパレスチナ人をよせつけないようにしたうえで、そこに農薬を散布し、風にのせて、パレスチナで育てられている野菜を汚染した。さらに、イスラエルが、パレスチナの農民たちにイスラエルの輸出産業のための作物を作らせ、種子やビニールハウスなどをパレスチナの農民に買わせるという経済構造を用いるという権力構造についても触れる。世界最先端ともいわれるイスラエルの農業の影の部分を明らかにし、その植民地的統治の実態に迫りたい。