抄録
曲面上の特徴線は,形状の認識,品質評価,意匠設計や幾何変形などで用いられ,CGやCADにおいて非常に重要である.特に,曲率線に沿った曲率の極値集合は,Ridge-valley線やCrest線と呼ばれる尾根谷線を形成し,曲面の様々な幾何学的特徴との密接な関係が研究されている.本研究では,尾根谷線が曲面の球反転変換によりどの様な影響を受けるかを数学的に解析し,尾根線と谷線が変換後に入れ替わる反転双対な新しい尾根谷線を導出した.球反転は,角度を保存する共形変換・等角写像であり,CG・CADでもよく用いられる変換である.共形変換を構成する変換のうち,回転と平行移動の剛体変換や拡大縮小に対しての尾根谷線の振る舞いはよく理解されているが,球反転による影響はこれまで議論されていなかった問題である.本講演では,意匠設計で重要な曲率エネルギーやCAD要素としてよく用いられるCyclide曲面と尾根谷線の関係を共形変換不変の視点から解説し,三角形メッシュで近似された曲面での反転双対な尾根谷線の数値実験結果を紹介する.