抄録
3枝病変を有する虚血性心疾患患者の心臓リハビリテーション(心リハ)を実施する際,安静時や軽労作においても高度の虚血や重篤な不整脈が起こりやすいため,リスク管理に基づいたトレーニングと安全なゴール設定が重要となる。今回,冠動脈3枝病変を有する高齢心筋梗塞症例に対し保存的治療と心リハ介入により自宅退院が可能となった症例を経験した。運動中のリスク管理として,負荷前後に標準12誘導心電図にて虚血や不整脈評価を行い,自覚症状,バイタルサインをチェックしながら心リハを進行した。βブロッカーの増量やレジスタンストレーニングと有酸素運動の継続により,同一運動強度における二重積の減少をもたらし虚血閾値の改善につながったと考えた。今回の症例を経験して,多枝病変や合併症を有する高齢心疾患患者も,虚血のリスク管理下での心リハにより自宅退院をゴールとすることが十分可能であると考えられた。