抄録
重症心身障害児(者)の多くは,胸郭の変形,脊柱の側弯,骨盤の傾斜・回旋,「風に吹かれた股関節」などの非対称変形を複合的にもち,例えば,その中の「風に吹かれた股関節」の状態が悪化すると脱臼に至り,非対称変形を増悪させていく。今回,非対称変形群を維持・改善させるため,2症例の協力を得て,最も変形の起きやすい姿勢に対して姿勢ケアを実施し,評価した。結果,非対称変形は早期から適切な評価・介入を行えば予防でき,起きてからでも進行をとどめるばかりでなく,改善するということを経験した。2症例において非対称変形の改善は活動能力面の改善にも大きな影響を与え,日常生活においての環境調整も積極的な理学療法のアプローチとなった。さらに,定期的に計測を行い記録していく縦断的定量的評価は,患者様の現状評価のみならず,経過の中での予後予測,変形の早期発見,治療法の決定,治療の効果判定に有効であり,その大切さを再確認した。