抄録
本研究は,トラッキング課題遂行能力を測定し,要介護高齢者の転倒と関連があるとされる自己認識の逸脱程度の測定方法として代替できるか否か明らかにすることを目的とした。要介護高齢者と健常大学生を対象とし,トラッキング課題遂行能力・自己認識の逸脱程度・転倒経験の有無・歩行速度について測定・調査した。トラッキング課題遂行能力測定は前-中央の目標点を5往復する設定とし,①全所要時間,②前方所要時間,③後方所要時間を測定した。その結果,トラッキング課題の各所要時間(①~③)・自己認識の逸脱程度において要介護高齢者と健常大学生の間に有意差を認めた(p<0.05)。また,トラッキング課題の各所要時間(①~③)と自己認識の逸脱程度の間に有意な相関関係が認められた。つまり,トラッキング課題は自己認識の逸脱程度と代替可能である可能性が示唆された。