抄録
半側空間無視に対するプリズム順応は効果の持続性と課題以外への汎化が認められているが,効果が症例により特定の課題にしか現れないことや無効なことも報告されている。本研究ではプリズム順応前後での無視症状の変化を比較し,効果の違いと臨床属性の関連性を検討した。対象は,右頭頂葉損傷による半側空間無視4例である。方法は,対象者にプリズム順応を行い,その前後で線分二等分試験,文字抹消試験と車いす操作課題を行った。その結果,線分二等分試験では症例により成績の差がみられ,右中前頭回白質損傷を含む症例で改善がみられなかった。プリズム順応の効果は病巣部位によって差が生じる可能性があり,同じ右頭頂葉損傷例でも深部白質を含めた病巣のわずかな違いが無視の改善に影響を与える可能性が考えられた。