抄録
【目的】被殻出血Ⅲ-a型症例の急性期における理学療法プログラムの特徴を検討することである。【症例】55歳,男性,左被殻出血により右片麻痺・全失語症を認めた。【理学療法評価とプログラム】第20病日ではJapan coma scaleは1桁,Brunnstrom recovery stageは下肢Ⅱ,言語機能は全失語を認めたが,コミュニケーションは状況理解での応答が得られた。基本動作は,起立は平行棒では上肢の引き動作が優位であり,口頭指示での修正は困難であったが,平行板では体幹前傾を伴う起立へと自ら修正した。理学療法では,上肢の引き動作が困難な支持物を用いた環境での起立動作練習を実施した。第34病日には身体機能に変化はなかったが,移乗は見守りレベルで,移乗時の起立は車椅子のアームレストを把持し,前方重心移動を伴って可能となった。【考察】被殻出血Ⅲ-a型の急性期では,非損傷半球の特性を考慮したプログラムの立案が重要であり,聴覚理解能力が低下した症例では状況理解能力を活かす環境設定を行い,言語を用いなくても効率的な理学療法を実施できるような工夫が重要であると考えた。