2019 年 26 巻 1 号 p. 36-41
【目的】本研究の目的は,脳卒中者の歩行開始動作を運動学的・運動力学的・生理学的に分析し,若年者,高齢者との相違を調査することである。【方法】若年者7 名,高齢者5 名,脳卒中者6 名を対象とした。床反力計,表面筋電計,3 次元動作解析装置を用いて,歩行開始動作を分析した。【結果】若年者・高齢者と比較し脳卒中者では,単脚支持期の短縮,COP 後方移動量の低下,歩幅の低下,peak A-P の低下,A-P impulse の低下,麻痺側TA の筋活動開始タイミングの遅延,非麻痺側G-med の筋活動発生頻度の低下などの結果を認めた。【結論】歩行開始動作において,一部は加齢性変化の影響が考えられたが,COP 移動量・床反力・筋活動発生頻度などの変化は脳卒中による障害の影響が示唆された。今後は,麻痺側の機能改善や姿勢に対するアプローチの有効性の検証が可能になると考えられる。