理学療法 - 臨床・研究・教育
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症例検討
重複障害を呈する生活期脳血管障害症例の転倒頻度低減を目指して
―再評価をもとにした臨床推論により改善が認められた1例―
島崎 友希江連 亜弥瀧澤 快至
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2023 年 30 巻 1 号 p. 54-57

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抄録

【はじめに】脳血管障害は中枢性機能障害と合併症に分けられるが,生活期ではそれらが混在し問題点の絞り込みに難渋する場合がある。本症例報告の目的は,重複障害を呈した生活期症例に対する臨床推論の過程を報告することである。【症例】Wernicke脳症・脳梗塞・脳出血による重複障害を呈し,初発から20年が経過した50代女性。【経過】転倒頻度低減を目標に,立位での右後方への不安定性に対し右股関節の関節可動域・筋出力に対する介入を実施した結果,個々の機能は向上傾向であったが立位バランスの改善は乏しかった。再評価と問題点再考を行い,介入を協調性低下による複数関節の制御や主動作筋・拮抗筋の筋収縮の切り替え能力低下に対する内容に変更した後に,転倒頻度低減が認められた。【結語】重複障害を呈した生活期症例では障害像が複雑となり易いが,臨床推論を繰り返すことで障害像が明確化され,介入効果を得る可能性が示唆された。

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© 2023 社団法人 埼玉県理学療法士会
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