理学療法 - 臨床・研究・教育
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30 巻, 1 号
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巻頭言
講座
  • 岩間 清太朗, 牛場 潤一
    2023 年 30 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    Brain-Machine Interface(以後,BMI)とは,脳と機械を機能的に結びつけて相互に機能連携を図る,多種多様な技術の総称である。たとえば,ウェアラブル型の脳波計を使って頭皮脳波を分析し,その分析結果に基づいて機能的電気刺激や外骨格ロボットを駆動するタイプのBMIは,ニューロリハビリテーションとしての応用が期待されている。BMI使用の繰り返しにより,運動再学習あるいは脳の可塑性誘導が促され,麻痺側上肢の機能回復が進む。こうしたニューロリハビリテーションとしてのBMIの利用に加えて,本稿では頭皮脳波を用いたBMIを神経科学研究における実験ツールとして利用した研究について紹介する。

  • 西尾 尚倫, 田口 孝行, 岡崎 喜紀, 豊島 尊士, 森本 貴之, 赤坂 清和
    2023 年 30 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    理学療法士の会員数は年々増加し,その多くが30歳代以下という若年者を中心とした組織となっている。そのため,多くの施設において管理者が若年化し,管理経験の少ない者が管理者やチームリーダーを担う機会が増えている。埼玉県士会では令和3年度より若手管理者・リーダー向けにチームビルドアップの具体的方略について研修会を実施している。今回,埼玉県士会が行っている管理者育成に関する取り組みの紹介とともに,研修会のテーマであった①後輩育成・指導(新人教育含む),②メンタルヘルス・離職防止,③強いチームづくりについて紹介する。

  • 西尾 尚倫, 田口 孝行, 桒原 慶太, 塚田 和也, 山口 賢一郎, 髙橋 雄己, 赤坂 清和
    2023 年 30 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    昨今,地域包括ケアシステムに対応するために,医療・介護・福祉の連携を強化するだけではなく,理学療法士個人のさらなる質の向上が求められている。一方で,指定規則改定により,卒前教育だけではなく今後は卒後教育の重要性が高まっていくことが予想される。臨床現場では治療技術に加え,規律や服務,自己啓発などさまざまな能力が要求され,各経験年数により求められる役割や達成する目標も異なってくる。今回,後輩育成・指導のためのクリニカルラダー構築に関して,①クリニカルラダーの機能と役割について,②クリニカルラダーの立ち上げについて,③クリニカルラダーの具体的な内容について④クリニカルラダー運用上の工夫点についての視点から解説していく。

研究論文
  • 相澤 幸夏, 斉藤 陸, 高畠 啓, 宇佐美 優奈, 榎本 沙彩, 国分 貴徳
    2023 年 30 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【目的】膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)完全損傷後は自己治癒しないとされてきたが,我々は正常な関節運動を維持する保存療法によって自己治癒することを報告した。しかし,治癒過程におけるメカニズムや性差は未解明である。本研究では関節液に着目し,治癒反応の性差を明らかにすることを目的とした。【方法】雌雄マウスにて自己治癒モデルを作成し,4週間後にハイドロゲルを用いて関節液を採取,その後膝関節を採取し,組織学的解析および生化学的解析を行った。【結果】雌雄ともにACLの連続性が確認された一方で,コラーゲン線維配向に性差を認め,雄の方がACL長軸方向と平行な線維配向を有する傾向にあった。また,関節液中の治癒因子発現量は雌のみ高値を示した。【結論】雌雄とも保存療法により治癒傾向にあるが,治癒反応が異なるため各性に適したリハビリテーション法の確立が求められる。

  • 小林 渓紳, 那須 高志
    2023 年 30 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は大腿骨近位部骨折患者において,歩行の再獲得までの時期や歩行様式について,荷重率の観点から術後早期に予後予測が可能かを検討したものである。受傷前は自宅居住し,屋内外を独歩またはT-caneにて自立していた者40例を対象に年齢,性別,手術時間,麻酔時間,手術待機日数,術中出血量術,術後の生化学データをカルテから調査した。それらを術後7日目に73.8%以上の荷重率を獲得した者24例と獲得できなかった者16例の2群に分類し,2群間で各因子について比較検討した。その結果,73.8%以上の荷重率を獲得できなかった群は,術後CRP,WBCのピーク値,術後7日目の荷重時痛が有意に高値であった。そのため,術後の炎症が強い患者は受傷前歩行獲得が難しくなる可能性が示唆された。

  • 喜多 俊介, 原 和彦, 鈴木 康雄, 松本 優佳, 藤野 努, 村田 健児, 小栢 進也
    2023 年 30 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【目的】健常高齢者の歩行立脚初期の膝関節回旋可動範囲と下腿および足関節・足部評価指標の関係を調査した。【方法】健常高齢者18名を対象とし,動作解析装置を用いてトレッドミル上1.0 m/sの歩行動作を計測し,膝関節回旋運動をPoint Cluster Techniqueに準じて算出した。足部評価として足関節背屈可動域,Navicular Drop Test(NDT),Foot Posture Index,Thigh-Foot Angleを計測した。対象者の膝関節回旋可動範囲と各足部評価指標との関連をSpearmanの相関分析を用いて検討した。【結果】NDTは膝関節回旋可動範囲と有意な正の相関関係を認めた(r=0.58,p<0.012)。【結論】本研究の結果より荷重応答期における膝関節回旋運動は荷重による足部形状変化と関連することが示された。

  • 石田 実玖, 萬井 太規, 平田 恵介
    2023 年 30 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】前庭機能の予測的姿勢制御(APA)への関与を明らかにするため,sham条件と前庭ランダムノイズ刺激(nGVS)条件で歩き出しを実施した。また,前庭への刺激が行われていることを担保するために,立位が傾斜する効果がある直流電気刺激(tDCS)を同貼付位置で行い静止立位時のCoP偏位を確認した。【方法】若年成人に対し,電気刺激装置,三次元動作解析装置,床反力計を用い,0.2 mA,0.4 mAの刺激とsham条件の歩き出しと,tDCS刺激条件とsham条件の静止立位を計測した。【結果】nGVS 0.2 mA 条件でAPA onsetの早期化と,静止立位においてtDCS条件でCoPの陽極方向への偏位を認めた(p=0.03)。APA onsetのその他の条件間,およびAPA peak AP,MLの全条件,また,静止立位中のCoP速度の条件間で有意差は認めなかった(p=0.71-1.00)。【考察】歩き出しにおいて,APAの時間的変数でnGVSによるAPAが機能する可能性を示唆した。

  • 那須 高志, 小林 渓紳, 大堀 正明
    2023 年 30 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨近位部骨折の術後患者における歩行自立度を予測する因子と,そのカットオフ値を調査することとした。【対象および方法】大腿骨近位部骨折を受傷し,手術を施行された40名において術後14日目の歩行が自立した群としなかった群で比較した。また歩行自立度を目的変数とし,年齢と荷重率と荷重時痛を説明変数とし,ロジスティック回帰分析を実施した。さらに影響を与えている説明変数に関してはROC曲線からカットオフ値を算出した。【結果】非自立群は自立群に比し荷重率が低く,荷重時痛が高かった。また術後14日の歩行自立度に影響を与えているものは荷重率で,そのカットオフ値は72.3%であった。AUCは0.86であった。【考察】荷重率は歩行自立度に影響を与えており,その予測能は高かった。以上のことから,術後7日目の荷重率を測定することで,術後14日目の歩行自立度を予測できる可能性が考えられた。

  • ―症例研究―
    松岡 廣典, 平塚 大貴, 平井 仁, 森山 誠二, 堀 一樹, 後藤 良介, 松村 内久
    2023 年 30 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Pusher現象例に対した壁を利用した後方介助歩行練習を実施し,その効果について検証する。【方法】介入は,麻痺側下肢に長下肢装具(Knee ankle foot orthosis:KAFO)を装着し,非麻痺側側に壁が来るように位置づけ,理学療法士による後方介助歩行を実施した。アウトカムはScale for Contraversive Pushing(SCP),Burke Lateropulsion Scale (BLS),Trunk control test(TCT),Scale for the assessment and rating of ataxia(SARA)とした。【結果】介入後に立位姿勢の非対称性や立ち上がり動作,移乗動作のPusher現象は軽減を認めた。【結論】本法は,立位姿勢と立ち上がり動作時のPusher現象を軽減させ,介助量軽減が図られたと考えられる。

症例検討
  • ―病態とバイオメカニクス―
    大澤 樹, 齋藤 隼平, 吉野 晃平
    2023 年 30 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Long leg arthropathyは長下肢側の膝を外反することで下肢長を代償する姿勢戦略であり,結果として外側型膝OAを発症する。本症例報告の目的は,coxitis kneeの知見を参考に,病態とバイオメカニクス的視点に基づき治療介入することで,その治療効果を探ることにある。【症例記述】外来において右THA術後にLong leg arthropathyの姿勢戦略を呈していた症例に対し,機能的脚長差に着目した治療介入を行った結果,関節可動域および立位姿勢に改善を認めた。【考察】右股関節内転可動域と体幹左側屈可動域の向上により,機能的脚長差の補正として生じた右膝関節の屈曲と外反が改善を認めた。【まとめ】機能的脚長差に着目した治療介入を実施し,立位姿勢の改善を認めた。治療介入より姿勢の変化は見られたが,科学的データの計測には至らず,その治療効果に関して今後検証していく必要がある。

  • ―再評価をもとにした臨床推論により改善が認められた1例―
    島崎 友希, 江連 亜弥, 瀧澤 快至
    2023 年 30 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脳血管障害は中枢性機能障害と合併症に分けられるが,生活期ではそれらが混在し問題点の絞り込みに難渋する場合がある。本症例報告の目的は,重複障害を呈した生活期症例に対する臨床推論の過程を報告することである。【症例】Wernicke脳症・脳梗塞・脳出血による重複障害を呈し,初発から20年が経過した50代女性。【経過】転倒頻度低減を目標に,立位での右後方への不安定性に対し右股関節の関節可動域・筋出力に対する介入を実施した結果,個々の機能は向上傾向であったが立位バランスの改善は乏しかった。再評価と問題点再考を行い,介入を協調性低下による複数関節の制御や主動作筋・拮抗筋の筋収縮の切り替え能力低下に対する内容に変更した後に,転倒頻度低減が認められた。【結語】重複障害を呈した生活期症例では障害像が複雑となり易いが,臨床推論を繰り返すことで障害像が明確化され,介入効果を得る可能性が示唆された。

調査報告
  • ―同一評価を用いた実習生による指導者評価と指導者の自己評価―
    那須 高志, 宮原 拓也
    2023 年 30 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では実習の質の向上のため,実習生による指導者評価,並びに指導者による自己評価として同一評価を用いて,両者の満足度を調査している。今回,実習生と指導者の満足度と,それに影響を与えうる因子を調査した。【方法】対象は実習生24名と,その指導者24名であり,調査はアンケート調査を実施した。実習生と指導者の満足度と各質問項目の関係性,両者の各質問項目の差,また満足度に教育態度が影響を与えるかを調査した。【結果】「睡眠時間」「実習終了時間」「フィードバック時間」「達成度」は差がみられず,その他は指導者が低値を示した。重回帰分析は実習生において「質問しやすい雰囲気」が満足度に影響を与えていた。【考察】実習生と指導者は満足度と関連する因子が異なることが考えられ,指導者は実習生が「質問しやすい雰囲気」を重要視しているということを認識することで,満足度の高い実習が実施出来る可能性があるのではないかと考えた。

編集部からの記事
  • 深田 和浩
    2023 年 30 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    自身の研究を公に発信する機会の一つとして学会発表がある。学会発表は,単に研究成果を発表するだけではなく,議論を通して自身の臨床感や研究の発展につながるきっかけにもなる。また第3者から意見をもらうことで,自身や自施設の取り組みを客観視することができるため,若いうちから学会発表にチャレンジするメリットは大きい。本稿では,学会発表のメリットや学会発表の留意点などについて概説する。

2021年度研究助成報告書
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