世界的に高齢化が進む現代において,健康寿命を短縮させる変形性膝関節症の病態理解や治療法開発への要求が高まっている。当該領域におけるこれまでの基礎研究では,若齢の動物に,半月板や前十字靭帯の損傷を与えることで,変形性膝関節症を引き起こす外傷モデルが主に使用されてきた。しかし,実際に医療機関で変形性膝関節症と診断される患者の多くは高齢であり,また,必ずしも明確な誘因となる外傷を有しているわけではない。関節軟骨の再生能力が低いことは300年以上前から知られているが,現代においても有効な治療法開発が進んでいない背景には,このような基礎と臨床の明確な乖離が一因としてある。本稿では,この乖離を埋める第一歩として,自然発症型の変形性関節症モデル動物を使用してこれまでに我々が明らかにしてきた一連の研究成果を解説する。