2022 年 1 巻 1 号 p. 63-76
【背景/目的】2型糖尿病の病期に応じた運動処方を検討する前段階として,肥満と耐糖能障害の進行に合わせた,精巣上体脂肪組織と肝臓に由来する炎症性サイトカインの発現量の推移を検証した. 【方法】肥満を伴う2型糖尿病モデル動物である雄性OLETFラット,及び非肥満モデル動物として雄性LETOラットを使用し,8週齢,20週齢,30週齢,60週齢において,精巣上体脂肪組織と肝臓に由来するサイトカイン(IL-6,TNFα,IL-1β,IL-10)のmRNA発現量を測定した. 【結果】8週齢から30週齢にかけて,OLETFラットの精巣上体脂肪量と肝臓トリグリセリド量はLETOラットと比較して有意に高値を示したが,60週齢では有意に低値を示した.また,OLETFラットにおける耐糖能障害は8週齢の時点から確認され,その後は悪化し続けた.OLETFラットの精巣上体脂肪組織に由来するIL-6の発現量は,20週齢から30週齢かけて有意に増加し,その後は有意に減少した.一方,OLETFラットの肝臓におけるTNFαの発現量は,8週齢から20週齢にかけて有意に増加し,その後は有意に減少した. 【考察】内臓脂肪や異所性脂肪の過剰な蓄積が,2型糖尿病の病期の初期において耐糖能障害を引き起こし,肥満の進行により肝臓由来のTNFαと脂肪由来のIL-6が耐糖能障害を促進させることが示唆された.