日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
抄録
足病変 理学療法のポイント
佐藤 弘也
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. 14

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抄録

糖尿病足病変は,国際的に‘神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる感染,潰瘍,足組織の破壊性病変’と定義されている.足潰瘍は再発が多く,難治性であり7~20%が下肢切断となる.糖尿病足病変の発症にかかる要因は様々あり,糖尿病神経障害などの合併症をベースに,下肢末梢動脈の虚血,足関節や足部の変形や関節可動域制限,それに伴う足底圧の上昇などの外的要因,感染を含む創傷などがあり,それぞれが複合して存在し病態は多岐にわたる.重症の足病変では下肢を切断せざるを得ず,生命に危険が及ぶこともある.糖尿病足病変患者は複数の併存疾患をかかえ,合併症も多い.さらに高齢で低栄養のため虚弱,ADL が低下している患者も多く,患部の状態に加え,全身状態を適切に把握することが重要となる. 糖尿病足病変のリハビリテーションは,治療のフェーズによって段階的に分けて考える必要があり,ここでは,創傷を治療中の創傷治療期と創傷を予防する予防期に分けて考える.創傷治療期の病態は様々あるが,感染や組織の大欠損があるため完全な免荷が必要な場合と,潰瘍の治療をしつつも局所の免荷のみで歩行を行う場合がある.この時期は特に患部の免荷,不動に伴う廃用症候群の予防が重要である.重症例では免荷が数ヶ月に及ぶことがあり,元来歩行可能な患者では歩行,ADL 能力の維持が必須となる.感染が収束していない状況では局所の運動が禁忌となる場合もあり注意が必要である.また,創への不必要な物理的ストレスが治癒不全を引き起こすこともある.歩行に際しては,必要に応じてフットウェアや装具の検討などを行う.さらに歩行様式や歩容の指導,活動時の注意点やフットウェアの必要性などの患者教育も重要である.活動量の多い患者は歩幅が大きく,歩行距離も長いため創傷へのストレスを上昇させる可能性があるため注意が必要である.創傷予防は,初発の防止はもちろんのこと,創傷治癒後の再発予防も重要である.再発予防のために,糖尿病と併存疾患の管理,足部にかかる外的要因の除去などを行う.ストレッチで下肢関節可動域制限を改善させたり,フットウェアや靴の工夫によって歩行時の靴擦れや胼胝形成を減少させることができる.深爪や低温火傷などの日常生活での起こり得る物理的ストレスを減らすことも再発予防に貢献する.最後に足病変の治療を行う上で,一医療職では患者のすべてを把握することが困難であるため,多職種で連携し足病変の管理を行うことが患者の歩行や生活を守る上で重要となることを強調したい.

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