日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
抄録
糖尿病足病変の理学療法管理
河辺 信秀
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. 4

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抄録

米国の足病医学では,様々な要因による下肢創傷患者に加えて,下肢の運動器疾患患者も治療対象であるが,本講演における「足病患者」は糖尿病足病変,下肢動脈疾患,下肢静脈疾患を主要因とする下肢の創傷を有する,あるいはリスクを持つ患者とする.創傷を有する足病患者で治癒が得られず大切断に至った場合,義足歩行の獲得が困難であるため,大切断を予防することが治療上の重要な目的である.創傷治癒には長期に渡るため,廃用症候群が進行しやすい.従って,創傷を有する足病患者のリハビリテーションは,創傷治癒に貢献しつつ廃用症候群の予防を含めた身体機能・歩行能力の維持を行うことが目的となる.創傷の発症には,関節可動域,足部変形,小切断,歩行形態などの力学的な要因が関与しており,これらの病態から創傷の発生原因を推測することが重要である.また,創傷の治癒のためには創部の免荷(off-loading)が必須である.様々な免荷デバイスを用いた免荷歩行練習がリハビリテーションの役割であるが,免荷デバイスの選択は,IWGDF の off-loading guideline の推奨に従う事が多い.免荷歩行は,off-loading を達成し創傷治癒をめざしつつ,身体活 動量を増加させることが可能であるため,下肢慢性創傷患者の廃用症候群を予防するためにはもっとも重要な介入であると考えられる.本講演では,具体的な免荷歩行練習の方法とその効果について解説したい.また,創傷治癒後の再発予防や足病リスクを持つ患者の発症予防なども理学療法士の重要な役割である.運動力学的な観点からのフットケアに加えて,足病リスクの評価の実施が,理学療法による創傷の発生を防ぐことにもつな がる.本講演では,IWGDF のprevention guideline に従ったフットケアについて解説したい. 我々が2017 年に実施した調査では,足病患者に対するリハビリテーションを実施している理学療法士は,36.5%と低い水準であった.この分野への理学療法士の参画を増やすべく,日本糖尿病理学療法学会の協力 を得て,研修会を実施している.また,理学療法士に向けた啓発や教育を目的に,日本フットケア・足病医学会リハビリテーション委員会と日本糖尿病理学療法学会で連携事業を実施しており,一つの成果である「HADASHI check プロジェクト」についても紹介したい.

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