抄録
肝性脳症から生じるパーキンソニズムと診断された症例の理学療法を経験したので報告する。症例は80歳代,男性。初期評価時,易怒性や興奮など肝性脳症による精神症状や廃用症候群による日常生活動作能力の低下を認めたが,薬物治療による血中アンモニア濃度の低下に伴い,精神症状は徐々に改善した。排便回数や水分摂取量の情報を医師や看護師と共有して,血中アンモニア濃度をモニタリングしながら理学療法を継続した結果,日常生活動作能力が改善し8ヵ月後には自宅退院となった。本症例は,多職種連携によるアンモニア濃度のコントロールによりパーキンソニズムの改善を認めた。また,入院時から廃用症候群を含む種々の運動機能低下を呈しており,薬物治療だけでなく理学療法を実施することにより歩行能力や日常生活動作能力が改善し,自宅退院が可能になった。