抄録
本研究の目的は,重量物を下ろす動作中の腰部多裂筋が腰椎の動的安定化に与える影響を分析することである。健常成人男性7名を対象とした。10 ㎏の重量物を持った直立姿勢を開始肢位とし,重量物を正面の高さ約15 ㎝の台に下ろす動作をモーションキャプチャーシステムと床反力計にて測定し,得られた情報を筋骨格モデルシミュレーションソフトに入力した。腰椎の並進運動を許容しないモデルと,許容したモデルの2つの筋骨格モデルを使用して,腰椎の関節反力とL4に付着する腰背部筋の筋張力を算出した。2つのモデルで算出した筋張力を比較することで,腰椎の動的安定化に寄与する筋を分析した。その結果,腰部多裂筋の筋張力は腰椎の並進運動を許容したモデルで有意に大きい値を示した。本研究の結果から,腰部多裂筋は腰椎の並進運動を抑制し,重量物を下ろす動作中の腰椎安定化に寄与することが示唆された。