抄録
要旨
【目的】インフルエンザA 型感染を契機に鋳型気管支炎を発症した児において、徒手的肺過膨張法が有効であった症例について報告する。
【方法】インフルエンザA 型発症後の持続する胸痛、咳嗽および呼吸苦を主訴に入院となった健康な10 歳男児。入院早期より体位ドレナージを中心とした呼吸理学療法が実施されたものの、症状は残存し、その後に実施された胸部CT 検査にて鋳型気管支炎を認めた。そこで、医師との協議の上、鋳型気管支炎の改善目的に徒手的肺過膨張法を実施した。
【結果】介入後は胸部X 線検査、酸素化および自覚症状は改善し、気管支鏡による侵襲的な処置をせずに、自宅退院となった。
【結論】緊急での気管支鏡による鋳型栓の除去が必要でない鋳型気管支炎を発症した児においては、徒手的肺過膨張法を中心とした呼吸理学療法が、鋳型気管支炎の改善に有効である可能性が示唆された。なお、肺の圧損傷リスクや循環動態が不安定な例での実施には注意が必要と思われた。