関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 78
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骨・関節
左大腿骨頚部骨折骨接合術抜釘後、偽関節となった1症例
―Pick up歩行器での歩行をゴールとした背景について―
*野田 宗史高橋 賢木賀 洋谷口 豪石井 義則野口 英雄武田 光宏
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抄録

【はじめに】大腿骨頚部骨折骨接合術術後の早期荷重とラグスクリューの過度のTelescopingとの関係や、cut-outに至り抜釘を施行した症例に関する報告は散見される。しかし今回、大腿骨頚部骨折骨接合術によりT-caneにて退院後、骨粗鬆症が原因でラグスクリューが骨頭を穿破、臼蓋へ陥入することによる疼痛が出現したため抜釘を施行し、後に偽関節となった症例において、下肢の支持性へのアプローチやゴール設定に影響した背景などについて考察したので報告する。
【症例紹介】68歳女性。平成19年3月転倒により受傷。翌日当院でCHS固定術を施行。同年5月、術後8週目にT-cane歩行で退院、週2回の通院でリハビリを行なった。しかし徐々にラグスクリューの臼蓋への陥入による荷重時痛が出現し増悪したため、同年7月に抜釘を施行しリハビリを再開した。
【リハビリテーション経過】抜釘前の筋力は左股関節周囲MMT2~3、T字杖歩行は自立していたが、左下肢の荷重時痛が強く全荷重は困難であった。抜釘後、下肢筋力低下(左股関節周囲MMT2、左膝関節伸展3)や6cmの脚長差(棘果長 右73.0cm/左67.0cm)のため、サークル歩行にて左下肢立脚時に股関節・膝関節屈曲位でつま先接地していた。これに対し3cmの補高を装着し、内側広筋の促通、大殿筋と腹筋群の同時収縮を促す運動を行い、左立脚期に股関節・膝関節伸展位での足底接地が可能となった。5週目で荷重量は増加し、荷重時痛も軽減した。9週目にPick up歩行器での歩行可能となったが、左立脚期において墜下性跛行が著明であり、中殿筋の促通と股関節外転装具により跛行は軽減された。20週目には左股関節周囲MMT2、左膝関節伸展5となり、四脚杖での歩行が可能となったが、装具装着下においても左立脚時の跛行が未だ認められたため、Pick up歩行器使用での退院となった。しかし本人の満足度は低く再手術を強く望んでいたが、骨粗鬆症に加え骨萎縮が著しく再手術は困難と診断されており、障害受容での関わりでは難渋した。
【考察】本症例は骨粗鬆症であり、大腿骨頚部骨折後に偽関節を呈したという経過において、股関節の支持性は著しく低下していた。この症例に対して荷重時の筋機能改善や補高・装具の装着など、下肢の支持性向上へ積極的にアプローチしたことで、歩行能力の改善が見られたが、残存能力から転倒リスクを考慮した上でPick up歩行器での歩行をゴールとした。また障害受容の面では、本症例を通して骨粗鬆症から生じた骨折治療の予後や、残存能力での転倒リスクなどについて早期から理解を促すことの重要性について考えさせられた。

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© 2008 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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