抄録
【目的】
 理学療法では対象者に合わせて様々な介入方法が選択されるが、実際に用いられる具体的な介入方法は定かではない。本研究の目的は、入院脳卒中者に対する理学療法における介入方法とその組み合わせを分析することである。
【方法】
 9つの医療施設で調査を実施した。研究についての同意署名の得られた理学療法士が、入院脳卒中者に対して実施した理学療法において、1週間のうち任意の3日間の内容を記録した。理学療法士は87名、平均経験年数3.6年、脳卒中者は227名、平均年齢71.7歳、平均罹患日数168.5日であり、681回の理学療法が対象となった。
実施した姿勢や運動は、活動として準備的活動、ベッド上動作、座位、移乗、立ち上がり、車椅子移動、歩行準備活動、歩行、応用歩行、屋外移動、その他に分けて記録した。さらに各活動における介入手段や使用した器具を介入方法(65種)として、1つの活動において最大5個まで記録した。
 解析にあたっては、各活動の実施回数とその活動で最も頻度の多い介入方法を算出した。また、全活動で最も頻度の多い介入方法と組み合わせを算出した。
【結果】
 活動の合計は2718回であった。各活動の実施回数と最も多い介入方法は、準備的活動は445回でそのうち他動ROMex・ストレッチ(ROMex)が最も多かった(87.0%)。ベッド上動作は340回で筋力増強(48.2%)、座位は363回で姿勢調節(73.8%)、移乗は136回で運動学習(57.4%)、立ち上がりは411回で筋力増強(53.8%)、車椅子移動は87回で運動学習(37.5%)、歩行準備活動は230回で姿勢調節(58.7%)、歩行は428回で運動学習(48.8%)、応用歩行は121回でバランストレーニング(バランス、64.5%)、屋外移動は37回でバランス(51.4%)、その他の活動は120回で運動学習(25.8%)であった。
 全活動で多い介入方法は運動学習(38.2%)、姿勢調節(35.5%)、バランス(31.5%)、筋力増強(30.3%)、運動コントロール(24.0%)であった。また、多い介入方法の組み合わせは、姿勢調節とバランスを含む組み合わせが19.7%を占めていた。次いで姿勢調節と運動学習が15.5%、運動学習とバランスが13.5%、運動学習と運動コントロールが12.3%、筋力増強とROMexが10.8%であった。
【考察】
 介入方法が活動によって異なっていたことは各活動への介入の特徴を反映しており、脳卒中の理学療法における一定の視点を示唆するものと考えられた。また、活動は運動学習、姿勢調節、バランス、筋力増強といった特定の介入方法で構成される傾向があり、これらの理解が脳卒中の理学療法には必要であると考えられた。