関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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超急性期からの理学療法の介入で職場復帰ができた間質性肺炎急性増悪の一例
嶋 悠也玉田 良樹水谷 友紀
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抄録

【はじめに】
 間質性肺炎の急性増悪は致死的な疾患であり治療には副腎皮質ホルモンを使用するため筋力低下や運動機能の低下を呈する.そのため病態が改善したとしても日常生活動作が低下することが多い.今回,間質性肺炎の急性増悪を呈した患者に超急性期から積極的な理学療法を介入することで職場復帰ができた症例を経験したので報告する.
【症例】
 60代男性.職業は飲食業.間質性肺炎で当院の呼吸器科に通院していた患者.呼吸状態が安定していたため薬剤は使用せず経過観察であった.平成23年12月初旬より喀痰が出現し労作時呼吸困難を自覚.1週間後に安静時呼吸困難も出現したため当院を受診.SpO2が60%(室内気)と著明な低下が認められ胸部レントゲンで間質性肺炎の急性増悪が疑われたため緊急入院となる.
【説明と同意】
 本研究は対象者に同意説明文を用いて紙面と口頭による説明を行い,書面にて同意を得た.
【経過】
 初期評価.意識清明.血圧126/72 mmHg.脈拍:91 bpm.体温:36.5℃.呼吸回数:30pm.聴診:下肺優位にfine cracklesあり.胸式呼吸パターン優位.NIPPV装着.SpO2:97%(Fio2:0.4) .The Nagasaki University Respiratory Activities of Daily Living(以下NRADL):0/100.起居動作は自立しているが動作時のSpO2の低下や呼吸数の増大あり.初日からステロイドパルス療法開始.第2病日にリザーバーマスク10ℓ吸入下で10m歩行実施. 酸素化の改善が乏しいため, 第7病日NIPPV装着となった.しかし,理学療法は継続しNIPPV下で自転車エルゴサイザー実施.第21病日NIPPV離脱.リザーバー式マスクでは労作時に外れてしまうことが多いためリザーバー式カニューレを導入. O26ℓ吸入下で20m歩行実施.第37病日膝伸展筋力.WBI右17.6/左15.3.第68病日6分間歩行(O2HOT5ℓ):70m.第79病日階段昇降実施.第82病日外泊訓練開始.第101病日最終評価. NRADL:42/100.6分間歩行(O2HOT5ℓ): 315m.膝伸展筋力.WBI右21/左13.3.第103病日自宅へ退院し、飲食業に復帰.
【考察】
 今回,医師に理学療法を依頼するよう促したことで超急性期に理学療法が施行できた.さらに,NIPPVやリザーバーマスク下で積極的な理学療法ができた.また,リザーバー式マスクでは労作時に外れてしまうことが多かったためリザーバー式カニューレを導入し,更なる日常生活動作の向上をはかった.自宅退院を考え入浴動作,階段昇降,更衣動作など呼吸苦が認められるものは動作を分けて行い,手順や呼吸方法も指導した.これらを薬物治療と並行し超急性期から理学療法が介入したことで,自宅への退院をより円滑にしたのではないかと考えられる.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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