関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 113
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両側下肢の反復運動における脳活動領域の変化 ―近赤外分光法(NIRS)による分析―
沼田 純希剱持 美希金子 純一朗
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キーワード: 脳卒中, 近赤外分光法, BATRAC
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抄録

【目的】
本研究はBATRAC(Bilateral- Arm Training with Rhythmic Auditory Cueing:両側上肢同時反復運動)の理論に基づき考案した下肢運動課題を対象とし,近赤外分光法(NIRS:Near-infrared spectroscopy)を用い課題特異性の検証を実施したので報告する.
【方法】
対象は脳卒中患者1名(男性,50歳代,左中大脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(発症後7年経過),右片麻痺,言語障害) および,健常成人女性12名(平均年齢21.4±1.00歳)であった.対象者には大学倫理委員会の承認後,十分な説明を行い同意を得た.計測には22CH×2対のプローブを用いた近赤外光イメージング装置(NIRS ,ETG-4000,Hitachi,Japan)を使用した.プローブは前頭葉領域と頭頂葉領域に配置し,酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)・還元ヘモグロビン(Deoxy-Hb)・総ヘモグロビン(Total-Hb)が検出されるよう設定した.運動課題として,ボールを用いた足関節底背屈反復運動課題(以下,BT)と不安定板を用いた運動課題(以下,IT)を実施した.解析は,前運動領域(10CH:ブロードマン6野と9,46野の一部)と頭頂連合領域(10CH:ブロードマン5,7野)と定義して解析し,Oxy-Hbデータを対象とした.8回の課題データから練習として1回目,ノイズや頭部の運動など課題データの中で逸脱している2回をカットした後,5回の課題データを加算平均し,安静時Oxy-Hbに対して3SD以上の増加がみられた場合,課題による賦活と定義し解析を行った.また,関心領域内の賦活として認められたCH数を加算し,課題間で独立性(χ2検定)の検定及び,課題内で適合度判定(χ2検定)を用い検定した.
【結果】
CVA症例において,関心領域では,両側特に障害側前運動領域および非障害側頭頂連合領域に賦活がみられた.また,関心領域以外では両側の前運動領域周辺,および運動感覚野周辺に賦活がみられ,障害側前頭葉については広範な賦活が認められた.一方、健常者では,課題間では,BT群では頭頂連合領域で((χ2=20.4),IT群では前運動領域において優位な賦活が認められた((χ2=30.0).課題内では,BT群では頭頂連合領域優位の賦活が認められ((χ2=8.52),IT群では領域間に差は認められなかった((χ2=0.0243).
【考察・まとめ】
CVA症例では左右非対称に,特に障害側運動領域に顕著な賦活が認められた.また,健常者では課題特異的な脳活動変化が認められた.このことより,脳卒中リハビリテーションにおいて,課題特異性を考慮し,障害部位に応じて個々の症例に対し最も効果的な治療を選択する必要性が示唆されたと考える.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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