関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 114
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脳卒中片麻痺患者の麻痺側下肢への荷重意識がステップ動作のパフォーマンスに及ぼす即時的効果について
上杉 睦園 英則筒井 麻理子入江 武志
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抄録

【目的】
 脳卒中片麻痺患者の日常生活動作では麻痺側下肢の使用を避けた動作が生じ,麻痺側への荷重を避けた動作が習慣化すること報告される.麻痺側下肢への意識的な荷重を行いながらの静的立位,立ち上がり動作の分析の報告は多いが,ステップ動作の検討は少ない.ステップ動作は歩行,階段昇降動作につながる動作であり,臨床で多く用いられる練習課題である.本研究ではステップ動作で麻痺側下肢への荷重意識がステップ動作のパフォーマンスに即時的な効果が認められるか検証した.
【方法】
 対象は脳卒中発症後6か月以上経過し,ステップ動作が実施可能な脳卒中片麻痺患者19名を対象とした(平均年齢69.5±10.3歳,男性11名、女性8名)であった.対象者を無作為に介入群と対照群に振り分け,対象群は通常の運動療法のみ,介入群は通常の運動療法に加え麻痺側下肢への荷重を促す運動3種目(立位荷重練習,前方ステップ練習,サイドステップ練習)を実施した.測定課題は10cmの段差を用いたステップテスト,サイドステップテスト,最大一歩幅を測定し,運動療法および介入の前後で測定した.介入効果を調べるため介入群,対照群においてそれぞれ前後の計測値で対応のあるt検定で比較した.尚,本研究は善仁会横浜第一病院倫理委員会の承認を得て,対象者に対し説明と同意得て実施した.
【結果】
 ステップテスト(回±標準偏差)では介入群では前:8.4±3.7、後:8.4±3.1,対照群で前:9.0±2.7,後:8.8±3.1であった.サイドステップテスト(㎝±標準偏差)では介入群で前:38.8±18.1,後:42.8±22.0,対照群で前:45.5±14.4,後:48.8±16.7であった.最大一歩幅(㎝±標準偏差)では,介入群では前:46.5±18.3,後:48.4±24.3,対照群で前:53.5±13.1,後:54.8±19.9であった.すべての測定項目において介入群、対照群ともに前後間で有意差は認めなかった. 
【考察】
 本研究ではステップ動作にて麻痺側下肢への意識的な荷重を行いながら実施したが,即時的なパフォーマンスの改善は認めなかった.ステップ動作は体幹のコントロールや麻痺側下肢と非麻痺側下肢の間で重心をコントロールする複雑な動作課題であり,麻痺側を意識的に使用することだけでは,即時的なパフォーマンスの改善は得られなかったと考えられる.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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