関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 128
会議情報

慢性腰痛者における腹筋群収縮時の左右非対称性の検討
櫻田 千早舞弓 正吾沼澤 拓也長谷川 洋介太田 恵
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
本研究では、腹筋群の収縮時における筋厚の左右非対称率が慢性腰痛の有無で差異があるのかを明らかにすることとした。
【方法】
対象は、慢性腰痛群(腰痛群)男性19名、女性6名(30.9±6.1歳)、腰痛のない者(健常群)男性12名、女性6名(29.9±5.7歳)とした。慢性腰痛の定義は、背側最下位肋骨から殿溝もしくはその近傍まで及ぶ腰痛が3ヶ月以上継続している者とした。除外基準は、下肢神経症状を有する者、鎮痛剤やステロイド服用している者とした。対象筋は、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋とし、腹直筋は臍から外側4cm、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋は、前腋窩線からの垂線と臍部を通る水平線との交点から2.5cm内側の部位で超音波画像診断装置を使用して筋厚を測定した。測定肢位は背臥位および座位にて行い、腹壁引き込み動作(Drawing-in以下DI)時に測定を行った。筋厚の左右非対称率は、左右の差の絶対値を左右でより大きかった値で除し100を乗じて算出した。健常群および腰痛群の群間比較を、対応のないt検定を用いて解析した。有意水準は5%とした。被験者には本研究の目的・および方法について口頭および紙面にて十分に説明し、研究参加の同意を得た。
【結果】
背臥位における左右非対称率については、外腹斜筋(腰痛群12.0±9.0%、健常群14.0±8.2%)、内腹斜筋(腰痛群13.3±11.5%、健常群12.6±7.3%)のいずれにおいても、群間に有意差はみられなかったが、腹直筋(腰痛群11.1±8.5%、健常群6.6±4.8)および腹横筋(腰痛群18.7±10.7%、健常群9.8±8.7%)においては、腰痛群が健常群より有意に高かった。(p<0.05)。また座位では、腹直筋(腰痛群10.0±6.9%、健常群10.2±3.3%)、外腹斜筋(腰痛群14.9±10.3%、健常群11.4±11.1%)、内腹斜筋(腰痛群13.2±12.2%、健常群12.5±7.1%)のいずれにおいても、群間に有意差はみられなかったが、腹横筋(腰痛群16.2±11.7%、健常群12.2±9.0%)にのみ有意差がみられた(p<0.05)。
【考察】
腹横筋が収縮することで腹腔内圧が上昇することから、腹横筋は脊柱の分節的安定性を担っており、その収縮不全は腰痛を惹起させる原因になり得るといわれている。本研究において、慢性腰痛群では健常群と比較して、背臥位、座位ともにDI時に腹横筋において左右非対称性が認められた。
【まとめ】
腹横筋の収縮不全は慢性腰痛に関連していることが示唆されたといえる。

著者関連情報
© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top