関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 13
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発症前LSAと脳血管疾患発症後の経過について
手塚 麻希子
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キーワード: LSA, BI, 非麻痺側MMT
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抄録

【目的】
Life Space Assessment(以下,LSA)は,日常生活の活動量を評価する指標である.今回LSAを用いて,脳血管疾患発症前の生活が,発症後の身体機能・能力への関連性を検証する.
【方法】
対象は平成23年10月1日から平成24年1月14日に退院した脳血管疾患患者10名(男性6名,女性4名,平均年齢74.3±10.6歳).重度高次脳機能障害・認知症の者は除外.問診にて発症前LSAを聴取.また入院・退院時のBarthel Index (以下,BI),非麻痺側上下肢体幹Manual Muscle Testing(以下,非麻痺側MMT),Brunnstrom Recovery Stage(以下,Br-stage)・反射・筋緊張・感覚を担当者より聴取.
検定内容はLSA56点以上を高値群,56点未満を低値群と設定し各群のBIや身体機能の値を比較.統計処理はt検定を用いた(p<0.05).なお,対象者には研究の主旨や内容,個人情報使用と管理について説明し同意を得た.
【結果】
1)発症前LSA高値群6名(91.6±22.2点)・低値群4名(32.1±14.5)であり,各群間比において入院・退院時BIともに有意差を認めた.
2)入院・退院時の比較ではBr-stage・反射・筋緊張・感覚において有意差を認めなかった.
3)入院・退院時非麻痺側MMTの比較では両群共に有意差を認めた.(高値群の非麻痺側MMT入院時平均3.5退院時4.8,低値群の非麻痺側MMT入院時平均2.8退院時3.9)
【考察】
今回,結果より有意差があった非麻痺側MMTとBIの関連性について報告する.
LSAは,日常生活の活動量を評価する指標であり,身体機能が高いほど活動性が高く,行動範囲が広いとされている.また,入院時重度の機能障害を伴うと日常生活障害が重いとされ,身体機能とBIには正の相関があるとされている.今回の結果より,低値群では発症前より身体機能が低かったのに対し高値群では高く,BIで有意差を認める結果となったと考える.
非麻痺側MMTの比較でも,高値群にて入院・退院時の値が高く,発症前より身体機能が高かった事が推測される.一方低値群では,非麻痺側MMTは改善傾向にあったが,発症前より機能低下に伴う活動量低下を持ち合せており,BIへ影響を与えたと考える.
よって今回の研究より,発症前生活の活動性が高いほど,発症後の非麻痺側MMTが高い傾向にあり,BIへ影響すると示唆された.
【まとめ】
今回,発症前LSAがBIや非麻痺側MMTへの影響について検証する事ができた.一方でBr-stage・反射・感覚・筋緊張は有意差を認めなかったが,脳血管疾患患者の経過や予後については多くの報告がある.そのため,障害部位や麻痺の程度など踏まえ再検討していく.また,対象者数を増やし退院後LSAも含めた経時的な調査を行っていく.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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