関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 141
会議情報

脳損傷例における転帰、歩行能力、理学療法単位数の変化-当科における18年度と21年度の比較-
小林 大祐國澤 洋介松本 孝彦藪崎 純高野 敬士小林 沙希鈴木 苑香山本 満高倉 保幸
著者情報
キーワード: 脳損傷, 単位数, 理学療法
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
我々は、脳損傷例に対する早期からの理学療法(Physical therapy;PT)の重要性を考慮し、特に2007年以降において、練習量の増加を含めた急性期PTの見直しに取り組んできた。今回、脳損傷例を対象に転帰、歩行能力、PT単位数を調査し、取り組みを行った前後で比較、検討した。
【方法】
対象は、当センターに入院した初回発症の脳梗塞、脳出血患者で、発症から7日以内にPTが開始され、PT開始時の下肢ブルンストロームステージ(下肢BRS)が4以上であった18年度(2006年8月1日~2007年7月31日)の77例、21年度(2009年8月1日~2010年7月31日)の121例とした。対象の属性(18年度/21年度)は、平均年齢66.1±12.2歳/67.9±12.3歳、下肢BRSの中央値は6/6、PT開始日の中央値は4日/3日であり、年度間に有意差を認めなかった。調査項目は、在院日数、転帰、各週の歩行獲得率、1日平均のPT単位数(PT単位数)とした。歩行獲得の判定には、機能的動作尺度を用い3点(修正自立)以上を獲得と評価した。各週の歩行獲得率では、発症から1週目、2週目、3週目各々における歩行獲得者の割合を算出した。在院日数、転帰、各週の歩行獲得率、PT単位数について、18年度と21年度で比較した。統計学的検討では、IBM SPSS Statistics 19を使用し、有意水準は5%とした。本研究の実施に当たっては所属機関の倫理審査委員会が定める申請規定、個人情報については所属機関の患者個人情報保護規則を遵守した。
【結果】
在院日数の中央値(25%-75%値)は、18年度が29(19-49)日、21年度が18(13-28)日であり、21年度では有意に短縮した。転帰(自宅退院/転院)は、18年度が48例/29例、21年度が95例/26例であり、21年度では自宅退院例が有意に増加した。各週の歩行獲得率(1週目/2週目/3週目)は、18年度が26%/47%/57%、21年度が45%/65%/73%であり、各週において21年度で有意に高値を示した。PT単位数の中央値(25%-75%値)は、18年度が1.8(1.5-2.1)単位、21年度が2.0(1.9-3.0)単位であり、21年度で有意に増加した。
【考察】
今回対象とした下肢運動麻痺が軽度である脳損傷例において、限られた在院日数の中で、自宅退院を想定したPT介入の重要性が再確認された。また、早期からの歩行獲得率改善を認めるなど、PT単位数の積極的増加を含めた急性期PTの見直しという当科の取り組みが、今回の結果に影響している可能性が示唆された。
【まとめ】
在院日数が短縮する中でも、自宅退院の増加、早期の歩行獲得率向上、PT単位数の増加を認めた。PT単位数の増加が与える影響については今後の検討課題と考えられた。

著者関連情報
© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top