関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 229
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脳卒中後遺症者へのキネシオテーピングの有用性について~シングルケースでの上肢リーチ動作による検討~
押山 徳生澤 瑞樹安江 大輔宇都木 康広熊倉 康博大屋 晴嗣
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抄録
【目的】
本研究は、キネシオテーピング(以下、KT)を用い、脳卒中後遺症者の麻痺側上肢の活動性の改善を期待できるかを検討することを目的とした。
 【方法】
 発表にあたり、本症例に研究趣旨を十分に説明した上で、研究協力への同意を署名にて得た。症例は50歳男性、脳梗塞により左片麻痺を呈し、発症から3ヶ月が経過している。ADLはすべて自立しているが、麻痺側上肢の動かしにくさを訴えている。課題動作は麻痺側上肢での上方への最大リーチ動作、側方への最大リーチ動作とし、KT施行前後にそれぞれ3回ずつ実施した。測定毎の足部の位置を統一し、測定は、上方への最大リーチ時の示指先端を壁にマーキングし床面からの垂直距離(以下、上方最大到達距離)、側方への最大リーチ時の示指先端を壁にマーキングし支持基底面外側端からの水平距離(以下、側方最大到達距離)を計測した。 KTは、キネシオテックスプラスウェイブ(キネシオ アジア社製)を使用し、KT施行は、KT協会出版ワークブックに準じて麻痺側の広背筋、前鋸筋、胸腸肋筋に施行した。統計処理は対応のあるt検定を用いて比較した。
【結果】
 上方最大到達距離では、KT施行前の平均値は210.9 cm、KT施行後の平均値は215.8 cmであり、KT施行前後での平均値の差は4.9 cmと施行後で増加傾向が認められた(p<0.1)。側方最大到達距離は、KT施行前の平均値は71.4cm、KT施行後の平均値は80.8 cmであり、KT施行前後での平均値の差は9.4 cmとKT施行後で有意な増加が認められた(p<0.01)。 
【考察】
 本研究では、症例を評価し、課題動作を行う上で体幹と肩甲帯の姿勢制御に問題があると考え、リーチ動作の主動作筋ではなく、広背筋、前鋸筋、胸腸肋筋にKTを施行した。症例の評価を基にKTを実施したことで、KT施行前後で、上方最大到達距離、側方最大到達距離共に増加を示したと考える。脳卒中後遺症者の個別性を評価し、KTを施行することで筋の活動性が向上し、課題遂行時の動作能力を向上させることが出来ると考える。
【まとめ】
整形疾患患者の下肢へのKTの研究報告はされているが、脳卒中後遺症者にKTを施行した研究は極めて少ない。本研究により、脳卒中後遺症者の上肢活動に対してKTが有効である可能性が示唆された。私たちが患者に対して理学療法介入できるのは1日24時間のうちの一部に過ぎない。理学療法介入により改善された身体機能を、リハビリテーション以外の日常生活の中で活用するために、KTはその一手段として検討材料になると考える。今回は1症例での検討であるが、今後とも症例数を重ねていく必要がある。
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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