関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 233
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コンサートに行きたい
ー高位二分脊椎児の自己導尿とオムツ替えに対する車椅子の工夫ー
猪爪 陽子
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抄録
【はじめに】
二分脊椎(SB)児の外出では,排尿管理が問題となる.特に座位が不安定な高位損傷の場合,自己導尿は獲得困難な場合が多い.今回,麻痺の程度が重度なSB児がアイドルグループのコンサートに行きたいという夢に向かって自己導尿にチャレンジし,4年かけて車椅子上で獲得できた症例を経験した.本人,家族の同意を得て,若干の考察を加え報告する.
【症例紹介】
平成5年生れ.女性.開放性SB,水頭症,体重41kg,麻痺のレベルTh5,両上肢痙性不全麻痺,左は重度でROM制限有り.普通型車椅子使用.性格は大人しく,必要なことも母に代弁してもらう.小4の時施設で自己導尿練習するが,できずに終了.中2の時,夢・進路の幅を広げるため,再度練習したいと親子で希望した.
【経過】
中3~高1;導尿姿勢を検討し, 学校の先生がトイレに台,クッションを作り,学校看護師が手順(鏡を見ながら左手で小陰唇を開き右手でカテーテルを挿入しオムツ上で排泄)を指導した.理学療法は,座位が安定しない,左手が小陰唇を開けない,右手の操作が上手くいかない,という問題に対し左手のROM改善,痙性麻痺に対し筋再教育と積極的な筋力トレーニングを実施した.自宅ではROM改善目的のナイトスプリントの装着,ずり這い練習,腹筋練習を継続した.高2;卒業後を考え,車椅子上で導尿,オムツ替えができる様なリクライニング式電動車椅子を作成することにした.坐幅の確保が必要であったが,見合う分広げると移動上の不都合が生じたため,使用時のみ坐幅が広がるよう両側を跳ね上げ式にした事で解決した.導尿は,座位が安定しリーチ範囲が広がり,トイレで出来るようになった.高3;実用性を高めるため,車椅子上で鏡なしで看護師が不在でもできるよう学校で練習した. 理学療法は更なる筋力強化を継続した.スキルが高まり,精神的に成長したことで,車椅子上で職員や介助者に必要事項を伝え,鏡無しでの自己導尿,オムツ替えが可能となった.
【考察】
一度諦めた自己導尿を本人の夢をきっかけにチャレンジし,学校と病院が連携し成果をあげることができた.学校の丁寧な指導と,様々な工夫で練習する下地ができ,本人のやる気と目的意識があったことで,身体機能の変化も引き出すことが出来たと考える.重度の麻痺でも諦めずに練習を継続することの意義を改めて考えさせられた.本人の意欲を保つための工夫として,ゴム紐・ダンベル等種々の道具を利用し,分かりやすい内容にしたのも良かったと考える.車椅子上での導尿・オムツ替えができると,排泄毎の乗せ降しが無くなり,介護者負担が軽減され外出時の負担も軽くなると考える.コンサートへはまだ行けていないが,本人は何事にも積極的になったため,いつか実現できると考える.
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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